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夏の小話 投稿者:kamiki 投稿日:2012/08/19(Sun) 16:18  No.16    [返信]
 今年の夏は一際暑い日が続いていた。
 山の上の忍術学園も例外ではなく、夜型の忍者のたまご達はますます昼間は日陰で身体を休めている。
 まだ夜型になりきれていない下級生たちも、こんな暑さの中野外活動をするのは危険と、先生が付く実技の授業以外は厳しく制限されていた。
 よって保険の新納先生の許可が下りるまで委員会活動も控えめだ。下級生達は不意に訪れた休みの様な放課後を思い思いに過ごしていたが、完全に夜型と化した上級生たちは大体の者が涼しい場所を見つけて寝ている。ある者は木の上で、ある者は塹壕の中で、そして留三郎は戸を開け放した自室で。

「…………襲われたいのか、コイツは」
 たまたま通りかかった文次郎が見たのは制服を着崩し大の字で無防備に寝る恋人の姿だ。誰が通りかかるとも限らないこんな場所で無防備に寝やがってとか、自分が近づいてるのに気付かんのかこのヘタレめとか、いくら夜動くからとはいえ昼間からぐーすか寝やがってとかあれこれ思うことはあったのだが実際に取れた行動は戸を閉め、寝ている留三郎に口付ける事だった。

「んふ……んっ、……んんんー!ぶふぁっ!」
「起きたかバカタレ」
「もんじ、ろ?」
「こんな所でのんきに寝やがって」
「自室で寝てて何が悪い! つーかいきなりなにしやがる!!」

 寝ている所に舌まで吸ってしまったので呼吸が出来ず起きてしまったらしい。もちろん文次郎は起こすつもりで口付けたので何ら問題はないが。

「戸くらい閉めろ。そんな色っぽい姿晒しやがって」
「閉めたら暑いだろうが! 大体色っぽいだなんだとお前の目がおかしいだけだろうが」
「んじゃあ"俺の前で色っぽい姿晒しやがって"って言えばいいか? お前が煽ったんだ責任とって抱かれろ」
「断る! っておい、やめっ…!」

 寝起きで動きが鈍っている所を巧妙に押さえつけ首筋に舌を這わすとそこは汗と留三郎の味がした。我ながら単純だとは思うが中心が重く疼く。

「やめろって、伊作も帰ってくる……っん、文次郎!」
「却下だ。伊作なら保健室で暑さあたりで来る奴の対応中だろ? 昼のうちは戻らんだろうさ」

 我慢できない、と耳元で囁かれてしまったら留三郎が抵抗する気力は失せてしまう。留三郎は耳が弱く、また文次郎の閨でしか聴けない掠れた声が好きだった。

「跡つけんなよ。あと、夜は鍛錬行くんだから、程ほどにな」
「善処する」

 素っ気ない留三郎の降伏に短く応えると文次郎は留三郎の全身に舌を這わせ始めた。
 漏れそうになる甘い声を必死にかみ殺しつつ、今夜は鍛錬に行けないかもしれないな、と数刻後の自分を予想しつつわき上がる快楽を受け入れ、目を閉じた。

クリスマス小話 投稿者:kamiki 投稿日:2011/12/24(Sat) 03:24  No.15    [返信]
※現パロ 表現はぬるいですが絡んでるので苦手な方は注意!!






「クリスマスだしな、今夜は俺がシてやるよ」

 そんな可愛いセリフを吐いて乗っかってきた恋人に滾らなかったら男じゃないだろう。
 俺はと言えば、当然まだ若く健全な男であるからして。俺にまたがりヤツの主導による長いキスが終わる頃にはギンギンに準備は整っていた。直ぐにでもコレを待ちわびている食満の後口に突き刺し存分に突いてやりたいが、普段中々素直にならないヤツが自分からシてくれるという滅多にない機会を棒に振るのは惜しい。
 腹に力を入れ、レアな光景を目に焼き付ける。……こうなると分かってりゃカメラ仕込んどいたんだがな。サイドテーブルに置いてある携帯につい目をやってしまうが、一端中止してカメラ起動なんぞしたら流石にムードぶちこわしだし、珍しくヤる気な食満を怒らせてもやっかいだ。
 首筋から胸の飾りといつも俺がするのをなぞる様に食満の唇が移動する。乳首を甘噛みされて感じる体質ではないが、上目遣いでこちらを見ながら赤い舌をちろちろ覗かせている表情には非常にそそられる。
 唇を這わせながら器用に脱がせられる俺は裸になっているが、食満が脱ごうとするのは押しとどめ下半身だけを脱がせた。昼間後輩達とのクリスマスパーティで来たという赤いサンタの格好は上着だけになった途端とても卑猥な色香を放ち出す。
 双方のっぴきならない程に興奮しているのは目にも明らかだがだからこそ、先にイく訳にはいかない。いつも前戯でイかせては楽しんでいる俺のプライドに掛けて、絶対にだ。
 そんな俺に決意を余所に食満の愛撫はじわりじわりと下肢へと移っていく。…………咥えてくれんなら口に出すのもありかもしれん。
「どうせなら咥えてくれよ、サンタさん」
 普段の食満はあまり咥えたがらないがクリスマスで特別と言うならあるいはと、期待を込めて素直な願いを声に出してみる。
 足の付け根辺りを舐めていた食満の視線が俺の真意を探る様に突き刺さる。…………やっぱダメか。そう思う程の沈黙の後ふっと笑んで和らいだ視線が俺のムスコに向けられた。
「そうだなぁ、今年一年良い子で俺を楽しませてくれたコイツにもプレゼントやらないとな」
 手のひらで優しく触れながら出た言葉は本当に予想外のもの。自分から願ったくせに了承されたのが信じられない俺を楽しそうに見やるとギンギンのムスコの先端に軽く口づけ、そのまま口に含んだ。
 じゅるじゅると卑猥な水音が耳を犯し、食満の赤い唇を俺のムスコが出入りする光景に視覚が犯される。本当に滅多に味わえない食満のフェラは技巧的にどうのと言うものではないが、その拙ささえもが俺を興奮させる。早すぎる、コレでは普段の食満を笑えないと頭の片隅に冷静な考えが浮かぶがそれより何より今俺はコイツを汚したい。
「……っ、出すぞ」
 逃げられないように頭を押さえ口内にたっぷりと欲望を注ぎ込む。
「むぐっ……ぐ…」
 苦しいのか顔を顰めながらも注がれたものを飲み干さなくては息も出来ない食満は喉を鳴らして飲み干した。
「ぐふっ…はぁ、はぁお前なぁ……」
「わり、もう我慢できねーわ」
 口を離した食満の顔は壮絶だった。酸欠からか赤く蒸気し、口元には溢れた白濁が伝っている。今イったばかりの俺が速効で力を取り戻すほどの壮絶な色気に我慢出来る程俺は聖人じゃない。

「最高のプレゼントのお返しをサンタさんにもしなきゃな」

 愉悦の期待に震えるのは二人とも同じ。
 明日は休みだ、加減も遠慮もいらないだろう。


 聖なる夜に愛を紡ぐ恋人達の甘い声は明け方まで止む事は無かった。


 Merry Christmas!

無防備なきみに恋をする5題 投稿者:kamiki 投稿日:2011/12/15(Thu) 07:32  No.14    [返信]
5.無意識のゼロセンチ

 渾身の力を込めた拳が互いの頬を捉え、二人は同時に崩れ落ちた。
 荒い息を繰り返す彼らは言葉を発する気力もない。抱き合うように倒れたまましばし、ようやく言葉を発せられるようになったのは太陽が沈み掛けてからだった。

「俺が上なんだから俺の勝ちだよな」
「バカタレ、お前が先に倒れてきたから支えてやっただけだ。俺の勝ちだろう」

 口喧嘩は出来てもまだ殴り合うまでには至らない。くっついて寝転びながら口喧嘩する様は傍目にはただいちゃついているだけなのだが幸いにして裏山にあるこの小さな空き地に人の気配はない。

「俺の正拳くらって動けないくせに」
「だからそれはお前も一緒だろうて…………いいから少し黙れ」

 果てしなく続くと思われた言い合いは先に折れた文次郎が接吻した事で終わりを告げた。
 密やかな水音は風が木々を揺らす音でかき消され、零距離で睦み合う二人の間にしか響かない。
 僅かに回復した体力で相手の身体を引き寄せきつく抱きしめ合う。
 長い長い口づけが終わった時、二人の目には情欲の火がともっていた。

「少しは体力回復したかヘタレ」
「てめーこそ、途中でバテたりしたら殺すぞ」

 喧嘩を始めた時と同じように楽しげに睨み合うと、今度は殴る代わりに再び唇に食らいついた。


 第二戦の開幕である。



お題配布元「確かに恋だった」

無防備なきみに恋をする5題 投稿者:kamiki 投稿日:2011/12/05(Mon) 00:53  No.11    [返信]
2.眠るきみに秘密の愛を

 常日頃から夜間鍛錬を怠らず、消える事のない濃い隈を目元に纏う潮江文次郎とて一応人の子、最低限の睡眠は取っている。 明け方近く、又は夕方の僅かな時間を自室の布団で寝ている姿は珍しくない。
 だが、会計室で仕事途中でのうたた寝というのは非常に珍しい。
 徹夜での帳簿合わせも3日目。後輩達を帰らせ一人で仕事をしていたのだが積み重なる疲労が出てきたのか、僅かに目を閉じてしまえばいかな潮江といえども睡魔にあらがう事は難しい。

 虫の声も絶えて久しい冬の夜。静寂の中現れた食満は会計室を覗き寝ている潮江の姿を見ると、普段は見せることの無い優しい微笑みを浮かべ中に入った。手には熱い茶とまだ暖かい握り飯。
 差し入れを置き直ぐ隣に座っても潮江が起きる気配はない。よっぽど疲れて居るのだろうか……
 そっと触れてみてもやはり起きない。もとより起こすつもりもないのだが、触れてもなお起きぬというのは食満の記憶にはついぞ無い。

「ったく、無理しすぎなんだっつーの」

 潮江が起きていたとしても聞こえたかどうかというささやかな声でつぶやいた食満は寝ている潮江のこめかみ付近にそっと触れるだけの口づけを落とすと、着ていた上着を掛けやりかけの仕事を片付けるべく書類を抜き取った。

「たまには俺に甘やかされてろ」

 静かな冬の夜の会計室。
 鬼と謳われる会計委員長は知らない。
 いつも悪態ばかりついてくる恋人が寝てる間だけは存分に甘やかして来る事を。

 外では降り出した雪が静寂を深めていた。



お題配布元「確かに恋だった」

無防備なきみに恋をする5題 投稿者:kamiki 投稿日:2011/12/01(Thu) 23:18  No.10    [返信]
1:誰にでもスキだらけ

「こらぁ〜 お前達真面目にやれー!」
「わぁーー! 食満先輩すみませんー!!」

 遠くから聞こえてくる用具委員達の声。叱る方も叱られる方も半分笑顔で和気藹々と委員会活動をしている。

 食満留三郎の周りには笑顔が絶えない。委員会でもクラスでも。それはヤツの人柄の成せる技で、一般には美徳に数えられるものだが…………正直面白くない。
 誰もがヤツの周りで笑顔を見せ、笑顔を返される。下級生はともかく、上級生の中には下心のある奴らも居るだろうに誰にでも彼にでもヘラヘラしおって……隙が多すぎるんだアイツは! 
 用事があって用具委員長の所に来たのだが、余りにのどかな光景に声を掛けるのを躊躇ってしまいこうして木の上からヤツの無防備っぷりを眺めている訳だ。一年はいい、一年は。だが三年の富松作兵衛なぞは先輩への憧れで済む範囲か? 顔を赤らめてるじゃないか!
 イライラとしながら見て居たらようやく食満がこちらに気づいた。気配を消していた訳でも無いのに今まで気づかんとはたるみすぎだろう。
 木を折りようとした俺を仕草で制し、富松に何か告げると食満の方からこちらへやってきた。

「用があるならさっさと声を掛ければ良いものを、何やってんだお前」
「あまりにふぬけた委員会活動に呆れて見ていただけだ」
「ふぅん? その割には不機嫌そうだったじゃないか」
「……気づいてたんならもっと早く声かけろ」

 気づいいて、その上で無視していたらしい。仮にも恋人のこの俺を!
 自慢じゃないが俺の仏頂面はかなり柄が悪く、級友達も不機嫌を察して近寄らない程だ。だがヤツはまるで意に介さずこう言ってのけた。

「まさか作に嫉妬するほど俺の事好きだったとはね、可愛いとこあんじゃねぇか」

 俺にしか見せない、非常に憎たらしくムカツク笑顔で!
 けっ、どうせ俺はこの殴りたくなるような笑顔に弱いんだよ。

 ムカツクから口を合わせて舌を痛いほど吸ってやった。
 ザマミロ。



お題配布元「確かに恋だった」

現ぱろ(途中) 文食満予定 投稿者:kamiki 投稿日:2010/10/18(Mon) 23:53  No.8    [返信]
 放課後の音楽室。夕闇が迫りもはや顔の判別もつかない明るさの中で一人ピアノに向かっている男が一人。
 音楽室の周りから人けがなくなってから、見回りの先生がくる前までの僅かな時間に、潮江はこうやってピアノに向かう。人差し指だけでたどたどしくなぞる音階は奴が好きだと言ってはばからない曲。
 聞かせたいわけじゃない。昔からピアノを習っている奴に聞かせられるような代物じゃないのは己が一番理解している。では何故こんなこそこそとピアノに向かっているのか、判らぬままとにかく同じ旋律を繰り返していた。
 音楽室に射し込んでいた最後の光が消えようかという頃、ひたすらに繰り返していた音階が唐突に途切れる。
「………やっぱつまんねぇ」
 ため息を一つ落とし、丁寧にピアノのふたを閉めると潮江は立ち上がりのろのろと音楽室を後にした。

------------
とりあえず、どっか晒さないと絶対途中でお蔵入りにしちゃうから。

短文 もんけま 投稿者:kamiki 投稿日:2010/09/30(Thu) 23:27  No.7    [返信]
秋も深まり、木々が鮮やかに色づく頃。
忍術学園は本日も変わらず賑やかな日常の光景が広がっている。
校内での実技訓練、予習、復習、補習。下級生は日のあるうちに、日が落ちてからは上級生が。
忍術学園が静まり返る時は無いといっても過言ではない。

そんな賑やかな学園においてひときわ賑やかな音を立てているのが、六年生の食満留三郎と潮江文次郎である。
この二人とにかく張り合いたがる。実技の成績、座学の成績から始まり自主練習の量、手裏剣の命中率といった真面目な事柄から食事の魚の大きさ、食べる速さなどの一年生ですら呆れる事柄までその種類を問わない。そしてどちらが勝っても負けても最後には取っ組みあっての喧嘩となる。
友人たちはもはや止める気も無く、嬉々として争う二人を放置していた。

今日もそんな喧嘩だった。元々の原因など二人とも既に覚えてはいない。ただ二人で思う存分喧嘩することこそが目的なのだ。
座学の成績では常に潮江にかなわぬ食満だが、それ以外の事については殆ど同等である。毎日の喧嘩も大抵はお互いが体力を使い果たして並んで横になって終わるのだが、今日に限って食満にはやや体力が残っていた。

大の字で寝転ぶ潮江に馬乗りになる食満。ギロリと険悪な視線を合わせた次の瞬間。食満はしお絵の胸ぐらを掴み、力任せに己へと引き寄せた。
色気も無く唐突に合わせられた唇に潮江が硬直していると、焦れた舌がなぶり入れさせろと無言の要求をする。
その要求に答えた訳でもないが、酸素の減った肺は新鮮な空気を求めており潮江は空気を求めて唇を開かせた。
だが入ってきたのは酸素ではなく待ちかまえていた食満の舌だった。
潮江の咥内に侵入した舌は息をも喰らい尽くすべく動き回り、潮江の舌に絡め、なぶる。
なんとか主導権を取ろうとする潮江だが、体制の不利もありとうとう先に音を上げてしまった。
荒い息を繰り返し肺に酸素を送り込むさまを食満は馬乗りのまま眺め、勝ち誇った笑みを浮かべた。

「ふん、思い知ったか。…俺がどんだけお前に惚れてると思ってやがる。ヘタレてねぇでさっさと奪いに来いよ。」
「…てめぇ、むかつく。」

息を整え終えた潮江は上体を起こし、己の上から食満を引きはがすと逆に地面に押しつけた。

002:一緒 もんけま? 投稿者:kamiki 投稿日:2010/09/20(Mon) 22:58  No.6    [返信]
「死ぬ時はお前と一緒が良いな」

恋人がポツリと呟いた言葉に食満は顔をしかめて聞き直した

「あぁ?何言い出すんだ唐突に」

休み前の夜中、長屋の空き部屋で、いわゆる逢引というものをしている二人にはいささか似合わない話題である。

「俺たちももうすぐ卒業だ。何時までも目を背けてはいられんだろう。」

そう言うと、潮江は食満の肩を抱きぐっと己の側に引き寄せた。
急な引き寄せに身体の均衡を保つ事ができず、潮江の胸に顔を埋める格好になる。

「いきなり何しやが…っ 」

苦情の言葉は降ってきた唇によって中途半端に途切れさせられた。
なじんだ感触、だがいつもの荒々しさは無くまるですがりつくような口付けに食満はそっと潮江の背に手を回した。赤子をあやすようにゆっくりとさすってやっていると潮江はようやく口を離し食満の首元に顔を埋めた。

「…実習の帰り道に、戦場跡を通ってきたんだ。打ち捨てられた死体がいくつも転がっていた。ああなるのが恐い訳じゃない、忍の者の行く末なぞあんなものだろう。だが、」

ぎゅっ、っと食満の身体を抱く力を強くし潮江は続ける。

「お前の屍が野ざらしのまま朽ち果てて行くのは…余り、想像したくない。お前が俺の屍さがして歩く姿もな。」
「なんだそりゃ、お前が先に逝くの前提かよ。しかも俺がお前の屍捜し歩くとか、随分自信あるんだなぁ」

内容に反し、とても穏やかな口調で食満は続ける。

「先の事なんて考えたって仕方ないだろう。こんな世の中だ。仮に、共に歩むと誓ったとしても、忍者なぞやってる以上どこでどうなるか分からん。そりゃ俺もお前と一緒にありたいとは思うよ。」

だがな、お前と一緒に死にたいとは思わん。

食満の言葉に潮江は顔を上げる。それはどういうことかと、問うより早く食満は続けた。

「屍を探すかどうかは置いておいても、一緒に死んでしまったら誰が弔うんだ。もし、お前が先にくたばったとしたら、その事実をお前の親や友人や学園で世話になった先生方にきちんと伝えたい。潮江文次郎という男が忍びの生をまっとうしたと、伝えて、弔いたい。お前はきっちり弔われて、あの世で俺が行くの待ってろよ。同じ忍び稼業だ、たいして待たすこともないだろうしな。」
「…待ってる間に他の連中もやってきそうだ。」
「それはそれでいいじゃねぇか。地獄巡りも、6人いればきっと退屈しないぜ。」

からからと楽しそうに笑う食満に、潮江はため息を一つついて降参の意を示す。

「ま、死んでも永遠にてのも悪くねぇか。」

9/6 双忍 投稿者:kamiki 投稿日:2010/09/06(Mon) 21:33  No.5    [返信]
木下先生の部屋を辞して長屋に帰る途中、三郎はふと気になった事を口にしてみた。
「そういえば、雷蔵が一年生をからかうなんて珍しいじゃないか。あの子達、すっかり雷蔵を私と思いこんでいたぞ。」
混乱する三人組の様子を思い出しくすくすと笑う三郎。雷蔵もつられたように笑い出す。
「へぇ、僕の演技もまんざらじゃなかったって事かな」
ひとしきり笑った後最初の質問の答えを口にする。
「そうだね、そんなに深い意味は無いんだけど……たまには、僕も君の真似をしてみたかったのさ。」
いっつも真似されてばかりだからね、と微笑みかけるとそこには感動の余り目を潤るませている三郎がいた。
「ら、らいぞう〜〜〜!私たちはやっぱり一心同体だよな!」
「はいはいそうだね〜」
今にも抱きついてきそうな三郎を宥めながら賑やかな二人は五年長屋の方向へ歩いて行った。

「本気で真似してる時ならともかく、普段は全然違うよな、あの二人」
「だよなー、三郎には分かりやすく尻尾ついてるし」
「あの手綱さばきは雷蔵じゃなきゃ無理だよね〜」
同じく濃紺の衣を纏う友人達は微笑ましいの半分呆れ半分で二人を見守っていた。

001:はじめて 投稿者:kamiki 投稿日:2010/08/29(Sun) 17:04  No.4    [返信]
早春の夜明け前、太陽が明るさをもたらすにはまだ一刻はかかるであろう闇の中に二人は居た。僅かな荷物を持ち、旅支度を整えて。

「覚えてる?はじめてこの門をくぐった時の事。」
「あぁ、俺の前に居たお前が門をくぐろうとして何もない地面でこけたんだっけな。」

男は目を細め昔を懐かしむ。

「もー、そんな事ばっかり覚えてるんだから…」

文句を言う男も表情は穏やかで微笑みを浮かべている。

「新しい生活の始まりに不安もあったけどそれ以上に期待が大きかったな。初めてあった君と仲良くなれそうな予感もしてたし。」

そっと門の支柱に触れる。忍術学園の門を守るサイドワインダーも今宵は居ない。残るものが、夜明けまでに学園を去る卒業生を見送ることはしないのだ。

「何度も通った門だけど、次にくぐったらもう一人の忍びとして生きていかなきゃいけない。君とこうして言葉を交わすのも最後になるかもしれない。でもね、」

伊作はまっすぐに留三郎と視線を合わせて続けた。

「この門の先にある新しい世界への期待がやっぱり大きいんだ。楽でも綺麗でも無いのは承知の上で。…君ともまた会えそうな気がしてるし。」
「…敵同士かもしれないぞ?それでもか?」
「それでも。」

簡潔に言い切る言葉に偽りはない。
留三郎は何かを言いかけるが、穏やかな笑顔の親友に対して結局何も言わなかった。

「じゃ、僕先に行くね。…いつかどこかで。」
「…あぁ、またな。」

親友に見送られる一人の忍びが、今はじめて忍術学園の門をくぐり旅立って行った。

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