| 今年の夏は一際暑い日が続いていた。 山の上の忍術学園も例外ではなく、夜型の忍者のたまご達はますます昼間は日陰で身体を休めている。 まだ夜型になりきれていない下級生たちも、こんな暑さの中野外活動をするのは危険と、先生が付く実技の授業以外は厳しく制限されていた。 よって保険の新納先生の許可が下りるまで委員会活動も控えめだ。下級生達は不意に訪れた休みの様な放課後を思い思いに過ごしていたが、完全に夜型と化した上級生たちは大体の者が涼しい場所を見つけて寝ている。ある者は木の上で、ある者は塹壕の中で、そして留三郎は戸を開け放した自室で。
「…………襲われたいのか、コイツは」 たまたま通りかかった文次郎が見たのは制服を着崩し大の字で無防備に寝る恋人の姿だ。誰が通りかかるとも限らないこんな場所で無防備に寝やがってとか、自分が近づいてるのに気付かんのかこのヘタレめとか、いくら夜動くからとはいえ昼間からぐーすか寝やがってとかあれこれ思うことはあったのだが実際に取れた行動は戸を閉め、寝ている留三郎に口付ける事だった。
「んふ……んっ、……んんんー!ぶふぁっ!」 「起きたかバカタレ」 「もんじ、ろ?」 「こんな所でのんきに寝やがって」 「自室で寝てて何が悪い! つーかいきなりなにしやがる!!」
寝ている所に舌まで吸ってしまったので呼吸が出来ず起きてしまったらしい。もちろん文次郎は起こすつもりで口付けたので何ら問題はないが。
「戸くらい閉めろ。そんな色っぽい姿晒しやがって」 「閉めたら暑いだろうが! 大体色っぽいだなんだとお前の目がおかしいだけだろうが」 「んじゃあ"俺の前で色っぽい姿晒しやがって"って言えばいいか? お前が煽ったんだ責任とって抱かれろ」 「断る! っておい、やめっ…!」
寝起きで動きが鈍っている所を巧妙に押さえつけ首筋に舌を這わすとそこは汗と留三郎の味がした。我ながら単純だとは思うが中心が重く疼く。
「やめろって、伊作も帰ってくる……っん、文次郎!」 「却下だ。伊作なら保健室で暑さあたりで来る奴の対応中だろ? 昼のうちは戻らんだろうさ」
我慢できない、と耳元で囁かれてしまったら留三郎が抵抗する気力は失せてしまう。留三郎は耳が弱く、また文次郎の閨でしか聴けない掠れた声が好きだった。
「跡つけんなよ。あと、夜は鍛錬行くんだから、程ほどにな」 「善処する」
素っ気ない留三郎の降伏に短く応えると文次郎は留三郎の全身に舌を這わせ始めた。 漏れそうになる甘い声を必死にかみ殺しつつ、今夜は鍛錬に行けないかもしれないな、と数刻後の自分を予想しつつわき上がる快楽を受け入れ、目を閉じた。
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